親しらず

日常

どうでもいいお話ですが、先日親知らずを抜きました。


親知らずという歯は、だいたい20歳頃に生えてくる歯で。
親から巣立った頃に生えてくるから、そう言われるのだそうです。
(諸説ありです)
一番奥に生えるこの歯は、磨きにくく虫歯になりやすい。
また、斜めに生えたり炎症を起こしたりする厄介者です。

わたしには、上の右上の歯が1本生えており。
下の歯は埋まったままで、どうやら生えてくることは無いようです。
だけど斜めに閉じこもっているひねくれ者の下の歯。

コイツをほじくり出して抜いた方が良いと言う先生が居たり。
顔を出さないならこのままでいいよ、と言う先生が居たりします。

今、診てもらっている先生は

「下の歯は、あごの骨に近いしこのままで良いでしょう」

という見解をして下さり、ホッとする。
だけど、生えている上の歯に対しては。

「ここは抜いてしまった方が良いですねぇ~」

何度か虫歯になっており、その都度抜かない方向で治療してきたけれど…
自覚していたがこの歯はうまく磨けていない。
治療した後が、また虫歯になってしまったようだ。

「抜くなら、年齢的にも早い方が良いですね」

その言葉に。もう潮時か…と答えを出す。

「ハイ…抜きます。」

うーん。一大決心をした気分だ。


こうして、抜歯の予約を入れて当日を迎える。
さよならする歯にめがけて、しっかり歯磨きもした。

「体調は大丈夫ですか~?」

と、にこやかに先生が迎えてくれる。
椅子を倒されたら~
成されるがまま。
口を開けて麻酔をしてしてもらい。

「ちょっと、麻酔の具合を見ますよ~」

先生が指を口に押し込んできて前歯で噛まされる。
なんか怖いー

「わたしの指を噛んでて良いですよ。ちょっと親知らずの所押しますね」
と先生が言う。

ぐいーーーー
ぐぐぐーーーー
ぐいーー

「はい、取れましたよ~」

「え?」

先生の指を噛みながら、恐怖に耐えていたが。
あっけなく終わり。
痛かったら手を上げる!という一大決心も意味無く…

椅子を起こされる。

「ここが虫歯になっていた所ですね~」

と、先生が抜いた歯を見せてくれる。

(えーーこんな風になってたのー!モゴモゴ…)
↑ガーゼを嚙まされるので喋れない。
じぃーーーーっと見つめる。

「持ち帰って、観察されると良いですよ。笑」

コクコク、と頷く。

血が止まり、口の中のガーゼを外されるとコロンと手に渡された。

中身は…お見せできません!笑

可愛い歯のケースに入れられた私の歯だった。

家に帰って、歯を取り出すと~。
思ったより重さがある。
根本までしっかりした大きな歯。
虫歯になっている所も良く分かる。

「あぁ~、前はここを削って治療してたんだ~」

こっちで、こう生えてたのかな?
こうか、こうゆう向きかな。
左右反転をさせながら観察する。

20歳の頃にニョキニョキと生えてきて、
親に知られることもない事をたくさん噛みしめてきた歯。
わたしと共に、甘いも苦いも酸っぱいも味わったよね。

「いい歯がはえろ~」

なーんて言って、軒下に投げても二度と生えて来ない歯。
親にも知られず抜かれた歯。

奥でうずうずする、厄介者にされてしまったけれど。
わたしの一部でもあったわけです。

だけど、なんだかスッキリしたような。
もう噛まなくても良いものを、奥でずっと噛んでいただけのような。

何を手放していくか、何を大切に残すか。
そんな事を思ってしまう日常なのでした。

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